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大阪市のオリンピックの招致に思う

 近代オリンピックが開催されるようになってから、100年の歳月が流れたが、アジアでは東京とソウルの2回大会のみ開催されただけである。しかも今世紀後半になってからのことである。
 所得倍増の池田首相のときの東京大会の後、日本は世界へと進出していく。貿易、海外旅行が自由化され、72年のドル・ショック、田中角栄の日本列島改造論まで高度成長を成し就げる。まさに破竹の勢いである。
 64年の東京大会の次はメキシコシティーであった。サッカーが銅メダルを獲ったのは印象に残っている。メキシコはこのオリンピック開催の借金が尾を引いて、アメリカ合衆国の属国となった。72年は西ドイツのミュンヘンで行われた。男子バレーボールの島岡のサーブ、老体南選手の活躍は脳裏に浮かぶ。東西の壁が崩れるまでは、日本と同様、欧州産業界の牽引役をつとめる。
 続く76年はモントリオール。戦後初めての北アメリカ大陸での開催であった。これでカナダが先進国の仲間に入いるお膳立てが出来上った。これもアメリカの属国。そして、80年はモスクワ。アフガン侵攻問題で日本は西側について、不参加。ソ連は以降、解放改革が行われ、ゴルバチョフのペレストロイカで一気にソ連崩壊となる。
 84年はロサンゼルス大会。レーガン大統領の2期目の選挙の年で、強いアメリカを印象付ける大会であったが、アメリカ政府の借金は、天文学的な数字となった。
 88年は名古屋が立候補していたが、ソウルに惜敗。韓国はその後、日本に追い付け追い抜けとばかり、追従は激しかったが、7、8年も経たないうちに、萎えてしまった。世界から見れば、88年は、名古屋ではなく、韓国で開催せねばならない事情があったと思わざるを得ない。92年は、ローマ大会から久しぶりにヨーロッパに返ってきた。それもスペインのバルセロナである。丘を目指して走っていた有森、エゴロワ。
 96年は再度アメリカ合衆国のアトランタ。私はなぜこの年がアメリカで開催なのかが不思議である。そして次は2000年は北京に競り勝ったオセアニアのシドニーである。  戦後大陸別の開催数は、ヨーロッパ3(ヘルシンキ、ローマ、バルセロナ)、アジア2(東京、ソウル)、オセアニア2(メルボルン、シドニー)、北アメリカ4(メキシコシティー、モントリオール、ロサンゼルス、アトランタ)。人口が一番多いのは、アジアであるが、2回とは少ないように思う。未だに南アメリカ大陸、アフリカ大陸での開催がないのは寂しい限りではある。
 しかしながら、開催地の選定にはIOCで投票によって決まるとされているが、どうも世界の支配者なるものが存在するならば、白人たちの好み、宗教絡みで決められているような気がしないではない。褐色、イスラム圏での開催は皆無である。
 西暦2004年はアテネ開催と決まっている。2008年に大阪市が名乗るのは、たいへん喜ばしいことではあるが、2004年の開催が西欧以外であれば、ネクスト大阪はない。また、開催が決まるときの世界情勢が、8年頃の日本が世界のキーワードになると考えるならば、大阪の開催の可能性は残される。日本よりも中国のほうが魅力であると世界が判断するならば、北京、上海になるだろう。
 アジアはオリンピックにとっては、マイナー的存在であることを、よく理解する必要がある。たとえば、ヨーロッパで人気の競技種目が行われる時刻なども、日本中心で話しを進めるのは禁物である。6〜8時間の時差を考慮に入れることも大切な招致要件である。アメリカで人気の種目を米現地の放映が夜中では、いただけない。開会式や閉会式などもあっちのゴールデンアワーに照準を合せることが肝要でしょう。
 国境、人種、民族、言葉、政治を超えたスポーツの祭典オリンピックというのは、表向きの姿であって、裏では、スパイが暗躍し、テロが温床と化すこともありえる。
 さて、大阪の受け入れ体制は一体、世界から見ればどうでしょうか。2、3年前にAPECを経験はしたが、知事が「クリントンさんにたこ焼きを食べてもらいたかった」では国際都市、OSAKAとはかけ離れているように思う。
 インフラは十分か。交通アクセスは。プレスセンターは。コンピュータ・メディア設備は。選手たちの住まいは。治安は。食料は。
 期間中、世界のVIPがたくさん来日する。関西空港から成田空港から、また特別機で伊丹からと、わがまま言いたい放題でやってくる。予定どおりに進めばいいが、スケジュールを相手に合せねばならないし、現場レベルでは24時間体制で備える必要がある。  外務省や宮内庁が窓口であれば、連絡だけでも、大わらわである。緊迫した世界情勢であれば、暗殺や事件に繋がるかは、紙一重である。
 日本一犯罪の多い街、大阪では、治安のほうもそれなりに行き届いていて、国際イベントを迎える覚悟は十分出来ているとは言え、相手は海外である。しかも東洋ではなく西洋の外国人である。今から外国人に対する取締りを、いっそう厳しくしていってもちょうどいいように思う。
 市民レベルでの盛り上げは、開催の4〜5年前から大阪を中心として景気が上昇して、市場が活況を呈することが確約されることです。そして外貨が大阪周辺の落ちること、投資した金額以上に返ってくれば、住民はほおって居っても喜ぶだろうし盛り上がってくる。いわゆる大阪魂でしょう。
 たとえば、商業ベースにおいても、出入り業者はすべて在阪の業者とし、他府県の業者は一切認めない。外国企業の参入はご遠慮していただく強い方針を立てていただきたい。大切な円が海外へ流出していくのは考えものである。また、地元に対する直接の還元、優遇措置として、記念品、旗、入場券、レセプションなどを優先的招待すれば、自然に盛り上がる。
 この前のフランスのワールドカップのように、ただのバカ騒ぎは「大阪人」はしない。見返りがあっての大阪オリンピックだと思う。
(1998.7.13)